ホーム>Author Unknown>若者と老紳士
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彼の名前はビルという。 大学4年生だ。彼はボサボサの長髪に、いつも穴のあいたTシャツとぼろぼろのジーンズといういでたちだ。 くつは履かず、ペラペラのぞうりをつっかけている。耳にはピアス、腕にはミッキーマウスの入れ墨がある。大学入学以来、ビルはいつもこういう格好をしていたのだ。 ビルはとても賢い学生だ。見ためにはちょっと変わってはいたが、洞察力がするどく、非常に頭がきれる。そんな彼は去年クリスチャンになった。 大学のキャンパスの向かいには教会があった。教会員の年齢層はどちらかといえば高く、日曜礼拝に出席するときは皆きちんと正装している。 男性はスーツにタイ、女性は上品なワンピース。教会の建物も築50年近いという由緒あるもので、外壁には蔦がからんでいた。 あるとき、ビルはそこの教会に訪れてみた。穴のあいたTシャツにぼろぼろジーンズ、ペラペラのぞうり、といういつもの服装のビルは教会の門をくぐった。礼拝はすでに始まっている。今日の説教のテーマは「汝の隣人を愛せよ」。ビルは通路に立ってあたりを見渡し、空席を探したが礼拝堂はすでに一杯だった。 教会員たちはビルに気がつき、あまりにも場違いなそのいでたちに互いに顔をみあわせていた。ビルは人々の視線など気にせず、空席を探しながら通路を前に進んだ。ビルはついに教壇の真正面にまで来たが、どこにも空席が見当たらなかったので大学生がよくやるように、おもむろにその場に腰をおろした。教壇の真正面、通路の度真ん中、カーペットの上にである。大学の教室ではよく見る光景であるが、この教会ではかつてないことだった。人々は牧師の説教には上の空で、ビルに全視線を注いでいた。あたりにはなんともいえない緊張感が漂っていた。 そのとき、礼拝堂の後ろの方で、教会の長老の一人が席を立った。彼は80代の白髪の老紳士で、品の良い三揃いのスーツを身につけ、胸元からは懐中時計の金の鎖が下がっている。老紳士は杖をつきながらゆっくりとビルの方に向かって歩いてきた。 それを見ている人々は、みな心の中で思っていた、「長老の年代の人には大学生のことなど理解できっこない。彼があの学生に何を言ったとしても仕方のないことだ。きっとあの学生は追い出されるのだろう。」 今や全ての視線が老紳士と若者に注がれていた。牧師ですらいつの間にか説教をするのをやめて二人の様子を見つめていた。会堂には張り詰めた空気が流れ、ただ紳士の杖の音だけがあたりに響いている。ゆっくりとビルの方にむかって進む老紳士。ビルも気付いて老紳士を見上げた。 老紳士はビルのところまでくるとにっこりとビルに笑いかけた。そして杖を近くの座席に立てかけ、ビルの隣にゆっくりと腰を降ろしたのだ! 「一人で座っていたら寂しいですからねぇ。 私もあなたと一緒にここで礼拝しますよ。」老紳士は低い声でビルの耳元に囁いた。 人々は老紳士の思いがけない行動に皆胸を打たれた。 牧師はゆっくりと深呼吸してからようやく口を開いた。 「私が今朝お話しした説教の内容は、恐らく皆さん忘れてしまうでしょうが、 |